2019年12月31日火曜日

暫しのお別れです

2019年が間もなく幕を閉じようとしています。今年も様々な出来事がありました。特に自然災害の猛威(人災とも呼べる?)は被災された方々にはもちろん、偶々難を逃れた我々の心にも大きな爪痕を残して行きました。忘れられないことです。

さて、スタートしてから4年になるこのブログ「いりや小町」をここで一旦閉じさせて頂こうと思います。いつも婆の取り留めない話に耳を傾けて下さった皆様に心からお礼申し上げます。ありがとうございました。

とは申せ、これっきり永遠にお別れというのは淋しすぎます。また春になったらどこかにヒョッコリ顔を出すかも知れません。今パートナーと思案中です。

ACCaのお正月のウィンドウに飾る作品をご紹介しますね。パートナーの最新作です。コルネリス・デ・ヘームの「果物籠のある静物」の模写です。オリジナルは上野の国立西洋美術館にあります。



来る年が皆様にとって良い年でありますように!


2019年12月20日金曜日

「版画日和 Vol.6」開催中です

根津のりんごやさんというギャラリーで婆達、上野銅好会の最近の作品を展示しています。既にいらして下さった皆様、ありがとうございました。

今回は、作品を額装せずマットのみの体裁で統一してみました。壁面がいつもよりすっきりしたのではないでしょうか?下の写真は、もう暗くなってから撮ったものでちょっと寂しげな印象も?(実は事情により、婆は展示を見ていません!)




歳末のお忙しい時ではありますが、お時間とれましたら是非お運びくださいますようお願いいたします。展示は、22日(日)午後5時までです。

 りんごや 文京区根津2-22-7 TEL 03-5685-2456
                           http://ringoya-galerie.com

2019年12月9日月曜日

"掲諦、掲諦、波羅掲諦"と唱えます

先週、近代美術館の「窓 展ー窓をめぐるアートと建築の旅」を見に行った時のことです。作品の中に「西京入国管理局」というインスタレーションがあり、もしかしてそこに入るには何か歌わされるかもしれないと予感し、その際は"掲諦、掲諦、波羅掲諦"(ぎゃあてい、ぎゃあてい、はらぎゃあてい)を唱えようと思っていました。(実際は、ニコッと笑って会釈するだけで済みましたが。)

この呪文みたいなフレーズは、般若心経の中の一部です。

年を重ねるに従って忘却力がいや増し、以前は普通に覚えていたことも羽が生えたように飛び去り、今や頭の中が伽藍堂になってしまった心地です。それなら、空っぽになったスペースに何か新しいことを詰められるのではないか。ふと思い立ち、今年の初めから朝お仏壇に向かった際に般若心経を唱え始めました。婆は決して信仰篤い仏教徒ではないのですが、力試し(!?)の積もりでした。



初めのうちはプリントしたものを読んでいたのですが、すぐに三分の二位は空で言えるようになりました。僅か20行ほどのものです。それが全文を覚えられないのです!後半の方を覚え始めると、前半の方を忘れてしまうのです。1行、2行、抜け落ちます。嗚呼悲しい。虚しい。(ん?これぞ般若心経の境地か?)

この1年を振り返ると、やり遂げられなかったこと、実現しなかったことが少なからずあります。それでも、"反省すれども後悔せず"をモットーに生きているので落ち込むことはありません。来年があるさ。再来年だって、と懲りずに再スタートできるのです。才能でしょうか?


2019年11月27日水曜日

師走の谷根千は楽しそう

足早にやってきた冬。冷たい雨の中をスーツケースを引いていく外国の人たちが本当にお気の毒です。ACCa の前の舗道は毎日たくさんの旅行者が行き来しています。

昨日は婆は工房の先輩の個展「"Sentimental" 岡 裕子 版画展」へ行ってきました。恵比寿のHIROSHIGE GALLERY というとてもお洒落なギャラリーで開催中です。
白を基調としたスタイリッシュな展示室に並ぶ作品は、作家さんのお人柄そのままでした。楚々として優しく都会風。憧れます(無い物ねだり?)。



12月1日(日)までHIROSHIGE GALLERY にて。http://hiroshige-gallery.com


さて、知り合いの展覧会はまだまだ続きますが、今年の締めは婆達上野銅好会の「版画日和  Vol.6」にさせて頂きます。師走の谷根千の町はどんなでしょう?

2019年12月17日(火)〜12月22日(日)
12:00〜19:00(最終日は17:00まで)
根津の喫茶・ぎゃらりー「りんごや」にて http://ringoya-gallerie.com



今回は、クリスマスプレゼントとしても喜ばれそうな小さな作品(10cmx10cm)を展示します。婆は、動物の”どうしたの?”シリーズを出品する予定です。
お近くにお出での際は是非お立ち寄りくださいね。お待ちしています。


2019年11月14日木曜日

じんわりと懐かしさが

週初めに旧友と那須に行ってきました。一泊のバス旅行です。
那須はこの秋一番の青空。紅葉は最終ステージに差し掛かっていましたが、時折吹く風で舞い降りてきた木の葉がコロコロと地面を転がっていく様子に心がほどけていく感じでした。

その友人とは若い頃いつも一緒に旅行をしていました。海外も国内も数え切れないほどです。が、彼女が結婚して家族が出来てからはバッタリ。それが今回数十年振りに復活できたのです!

と言っても、道中特に昔話を楽しんだ訳ではありません。ただ一緒にいるだけで何も話さずとも気を使わない。家族のような関係だったことを思い出しました。



2日目はアルパカ牧場を訪ねました。こちらは婆は15年振り位です。
前回は、まだ例の「ミラバケッソのCM」でアルパカが大ブームになる前だったので、訪れる人も他になく観光地化していませんでした。飼育員の方に、ペルーから移送してきたアルパカ達が新しい環境に適応するまで苦労した話を伺ったりしました。

今はアルパカブームが一段落し、元の静けさを取り戻しているようです。現在約250頭と数は少し減少していましたが、落ち着いた生育状況にあるようです(250頭全部に名前が付いているとのこと)。6月に毛を刈ってから5ヶ月くらいなのでまだ毛の長さは5cmほど。あの魅力的な風合いになるのは真冬のことなのですね。クラレのCMに登場したタレント君から4代目の”ハム”君は、心なしか美形に見えました。


2019年11月4日月曜日

小さな小さな私事ですが

先日のスペイン旅行中に腕時計が壊れてしまいました。出かける前にも予兆があったのですが、とうとう力尽きてしまったようです。スカーゲンのファッション時計でしたが、よく働いてくれました。

さて新しい時計を購入しなければと思っている時に、たまたま抽斗の奥から古時計の箱が出てきました。世界時計や懐中時計、旧型腕時計、etc. 皆男性用のものです。中の一つ、腕時計に見覚えがありました。若くして亡くなった兄のものです!

兄が病院のベッドの上で、時たま腕を高く上げて時計を振っている姿を思い出しました。電池ではなく振動で動くタイプだったのですね。1984年のことです。35年間も眠っていた時計が果たして動くだろうかと振ってみたところ、針が動き出したのです!

蘇った時計。そうだ、暫く使ってみようと自分の腕に着けてからもう2週間。無事に時を刻んでくれています。昔のシンプルな造り故、どこも悪くならなかったのでしょうか。
今頃になって初めて本当の形見分けを受け取ったような嬉しい気持ちです。



何とも私的な出来事を書いてしまいました(恐縮)。


2019年10月28日月曜日

すべて腐らないものはない!

品川区大崎のO美術館で「中林忠良銅版画展ー腐食の旅路ー」が開催されています。会期中に中林先生によるアーティストトークがあることを知り、是非とも参加したいと出かけました。

中林先生の主にモノクロームの作品は、非常に精神性が高く、見るものの心奥深くに迫ってくるものがあります。が、果たして自分がどこまで理解できているのか不安にもなるのです。作者のお話を伺うことで幾分なりと制作の意図を感じとれるようになるかもしれないと期待が膨らみました。

トークは、参加者からの質問に先生が答えられるという形で進められました。

東京芸大の油画のクラスにいながら、駒井哲郎先生の集中講義で銅版画を知り、進むべき道を確信したこと。金子光晴の詩片「すべて腐らないものはない」と出会い、社会や自然環境と自分との関係を、同様に腐りいつかは果てていくものと納得。「腐食」による銅版画は、その過程を自分の手の中で短時間のうちに画像化する仕事と捉えるようになったこと。3.11の大災害の後、自身の作品の中に穏やかな光が現れるようになったこと、などなど。

巧みな話術で、詩的に、時にユーモラスな話題も交えながら、質問者にわかりやすく話してくださいました。先生の慈しみ溢れる人間性にも触れることができたようで婆はいたく感激して帰ってきました。




展覧会は11月20日(水)まで。入場無料です。


2019年10月21日月曜日

動物表現は無限の可能性を秘めて

動物は自分の版画のモチーフとしてしばしば登場してもらっています。リアルにもイラスト風にも、可愛らしくも不思議にも、動物表現は無限の可能性を秘めているように感じています。この週末訪れた展覧会は偶然ですが、どれも動物が主役の作品でした。

一つは「林陽子 銅版画展 ーMystic elements Vl ~ my lost crown ー」
繊細でクラシックな印象の絵はケルトの森をイメージしているとのことです。細部まで心を込めて描かれた絵にはそこここに動物が隠れていて発見したときは「見つけた!」と叫んでしまいそうです。(銀座伊東屋K-ITOYA B1で10月31まで)



同じ伊東屋で開かれている「ケモノはあるく」展。こちらは森田MIUさんとYOSHINOBUさんのユニットによる展示です。オリジナル作品に加えて、動物モチーフを織り込んだポーチやハンカチーフなどの雑貨も色々。どれをとっても、詩人の仕事だなと感じます。ユーモラスにデフォルメされた動物がシンプルな線で描かれていて色合いもシック。みんな連れて帰りたい!(銀座伊東屋本館1Fで10月29日まで)



もう一つは唐津のり子さんの版画展「椅子の上の猫たち」。唐津さんの作品は、いつ見ても余白の美しさに感心します。今回、柄物の椅子と猫ちゃんの組み合わせがとてもお洒落なのですが、これもスペース配分が大きく寄与しているように思いました。(コピス吉祥寺4F連絡通路で10月31日まで)


2019年10月13日日曜日

備えあれば、とは言うものの....

大型台風19号が通り過ぎていきました。各地で川の決壊や土砂崩れがあり、多くの方々が被災されました。
台東区も、万一近くの荒川が増水して決壊すると、一部の高台以外ほぼ区内全域が浸水すると聞いていました。急ぎ、防災関連の情報資料を出してみました。


①「水害ハザードマップ」。区が配布。自然災害のうち洪水(浸水)について、浸水範囲を予想し地図化したもの。これによると婆宅は、荒川決壊後、3〜6時間以内に3〜5mの浸水があると予想されています!避難場所は上野公園と谷中墓地との2箇所。
②「台東区防災地図」。区が配布。災害が発生したときに避難する場所や、防災関係施設などを記載。こちらは主に震災を想定。近くの学校などに避難所マークがついています。



これらを眺めているうちに疑問がわいてきたので区の災害対策課に電話しました。

震災だと近くの学校などに避難できるが、学校の入り口を誰がいつ開けてくれる?
洪水の際、区内中の人間が上野公園に避難できるのだろうか?立錐の余地ない状態になってしまうのでは?

災害対策課の返事です。
今回は、震災避難のことは切り離して洪水のことだけ考えて欲しい。近所の施設などに避難すると、水が引くまでの一週間位の間そこで孤立してしまう恐れ有り。先ず命だけは守るということで、上野公園に逃げる。が、そこで避難生活を送るということではない。各自が文京区とか近隣地域に移って水が引くのを待つということです。

そうなのですか〜。上野公園が避難場所というのはそういう意味なのですね。その先の行き先を自分で確保しておかなければいけないということ。その備えが必要なのですね。あらら。
急いで区外の友人にメールをし、万が一の際の受け入れをお願いしたのでした。


2019年10月5日土曜日

カダケスをご存知ですか?

10日間ほど旅に出ていました。
40年ぶりのスペインでしたが、古い町バルセロナやマドリードはほとんど何も変わっていない印象。日々激変する東京とは対照的でした。

一つ変わったのはソフトの方。どのサービスもNET優先になっていたことです。ホテルはもちろん、列車も高速バスも。想像できるものは、東京で予約していきましたが、美術館も例外ではありませんでした。
例えば、バルセロナのピカソ美術館。フリーで訪ねてみたら、NET予約で既に定員に達していて入れませんでした。ホテルで予約してから再訪。危ういところでした。

今回のお目当は、スペインの北の端、地中海沿岸の小さな町・カダケスを訪れることと、マドリードのSorolla の美術館で彼の作品をじっくり観ること。この二つでしたが、どちらにも満足しました。

カダケス(Cadaques)は美しい町でした。足の便の悪さから観光客が少なく、昔ながらの白壁にオレンジ瓦の家並みが手付かずのまま残っています。ダリやピカソら多くの芸術家が愛したということで、石畳の細い通りには小さいギャラリーが点々とありました。




その一つのギャラリーで開かれていたミニ版画の展覧会に婆も出品していたのでちょっと覗いてみたかったのです。たまたまお会いした主催者の方から、その場で、売却済み作品の代金を支払われ、追加作品を送るように言われたのにはビックリ。おおらかな運営をしているようでした。

Sorolla は、 Sorolla美術館(彼の自宅だった)にあるもの、王立美術アカデミーやプラド美術館が所蔵展示している作品、どれをとっても彼の技術の高さが遺憾なく発揮されていて、う〜んと唸るばかりでした。




夏の名残の日差しが眩しく肌を焦がして帰ってきましたが、思い切って出かけて良かったなと思っています。


2019年9月21日土曜日

"階段下"も魅力あるスペースに

ご無沙汰してしまいました。
先日の台風15号が我が家にも被害をもたらし(何と雨漏りが!)修復にバタバタしていました。予想以上の大風で被災された房総の方々は、その後の雨や暑さでどんなにか辛い思いをなさったことでしょう。

今日は造形作家・田村雅紀さんの個展の最終日にお邪魔しました。場所は、昭和初期のレトロな建物、銀座の奥野ビルの地階にある、ギャラリー「巷房」の"階段下スペース"です。

これまでも「巷房」の3階で展示をなさっている作家さんが、この小さなスペース、階段下にも作品を設置されているのを何度も見てきています。が、田村さんの展示がこのスペースを一番上手に活かしているという印象でした。

貝殻と石粉を使って小さな立体(主に建物)を作っている田村さん。最近は国内外、色々な会場で意欲的に発表なさっていて将来が楽しみです。




隣の部屋で展示中の中村香さんという女性の作家さんの作品も見せてもらいました。
アクリル絵の具を使った抽象画や綺麗な色使いのコラージュは、控えめで静かな作者とは対照的に明るく楽しげなものでした。


(注:両展とも本日で終了しました)


2019年9月5日木曜日

またもやモノクローム?

この前、色を使うのが苦手なのでぬり絵に挑戦してみた話を書きましたが、よく考えてみると自分は色というものに鈍感なのかもしれないということに思い至りました。意識してみれば、周囲に本当にたくさんの色が存在しビビッドに個性を主張しているのに気がつかないのです!困った、というか残念なことです。

例えば街中。ACCa の近くの横道や小道は普通の住宅や家内工業の小振りなビルなどが並びいつも何気なく通り過ぎてしまうのですが、意識しながら歩くと、カラフルな建物がいくつも存在するのに気づきます!ちょっとカメラに納めてみました。



かく言いつつも、現在制作をしている版画もまたモノクロームになりそうです。
雪の朝のバス停の風景。この写真に惹かれてレトロな雰囲気に仕上げたいと思い取りかかりました。
女の子のコートには赤を挿す予定ですが。



2019年8月23日金曜日

嬉しい驚き、B & B!

この夏2度目の旅は安曇野へ。
前回泊まったのは、美術館があるような会員制のホテルでしたが(もちろん婆たちはビジターです)、今回はBed & Breakfast。若い頃利用したヨーロッパのシンプルな宿と朝食を想像していましたが、その予想は完全に裏切られました!

洗練された建物に加えて、朝食の見事なこと!目を見張りました。日本料理がメインですが、季節の新鮮な素材を使ってその朝の為に用意された料理が美しく盛り付けられています。今までこんな朝食を出してくれる宿に泊まったことがありません。



婆はこのブログを始めるに当たって、決して食べ物や食事の写真を載せないと心に誓ったのですが、思わず写真を撮りたいと思った程です(思い留まりました)。メニューの1例だけ載せてしまいますね。



宿には恵まれましたが、お天気の方はどうも...。3日間とも雨でした。
唯一、ガラス作家の松浦あかねさんにお会いできたのが嬉しいことでした。現在日本橋の三越で開かれている日本ガラス工芸協会の展覧会(8月27日まで)に出品中と伺いました。ご活躍です。そうそう、チワワのキューちゃんも元気でした。



2019年8月15日木曜日

近代日本の女性芸術家は?

「あいちトリエンナーレ2019」。この国際芸術祭に寄せて、吉良智子氏(ジェンダー・美術史研究者)が昨日8月14日の東京新聞夕刊に”アート界にも男女平等を”という一文を載せています。

日本では戦前まで、女性は東京芸術大などの国立の機関で美術教育を受ける権利がなかったと言います。私立女子美術学校や一部の私立校、私塾を除いて。 それが戦後男女共学になり法的には平等になったかのようなアート界だが、しかし現状は?という主旨かと思います。

丁度、上野の国立西洋美術館で開催中の「モダン・ウーマン ‐フィンランド美術を彩った女性芸術家たち‐」展を見てきた後だったので、両国を比較して考えることができました。

フィンランドの最初の美術学校では、創立当初から男女平等の美術教育を奨励したとのこと。19世紀半ば。日本に先立つこと100年です!自国での教育、さらには留学のチャンスを掴みキャリアを積み重ねることができたその時代の女性芸術家たちに焦点を当てた展覧会が今回のモダン・ウーマン展。考えさせられました。4年前に日本でも紹介されたヘレン・シャルフベックなど7人の女性芸術家の作品が展示されています。絵画、彫刻、素描、版画など。独自の芸術表現を追い求めて活動していった彼女たちの軌跡を垣間見ることができます。(9月23日まで)




ふと思いました。同じ頃の日本で、即ち明治・大正・昭和の時代に芸術を追い求め、不自由な環境にありながら、自己実現を果たした女性芸術家といえば誰だろうか?と。
上村松園、三岸節子、ラグーザ玉、小倉遊亀、片岡球子、などなど有名人ばかりが頭に浮かんできますが、きっともっと沢山の女性芸術家が注目されないまま埋もれているのではないでしょうか。