2019年10月28日月曜日

すべて腐らないものはない!

品川区大崎のO美術館で「中林忠良銅版画展ー腐食の旅路ー」が開催されています。会期中に中林先生によるアーティストトークがあることを知り、是非とも参加したいと出かけました。

中林先生の主にモノクロームの作品は、非常に精神性が高く、見るものの心奥深くに迫ってくるものがあります。が、果たして自分がどこまで理解できているのか不安にもなるのです。作者のお話を伺うことで幾分なりと制作の意図を感じとれるようになるかもしれないと期待が膨らみました。

トークは、参加者からの質問に先生が答えられるという形で進められました。

東京芸大の油画のクラスにいながら、駒井哲郎先生の集中講義で銅版画を知り、進むべき道を確信したこと。金子光晴の詩片「すべて腐らないものはない」と出会い、社会や自然環境と自分との関係を、同様に腐りいつかは果てていくものと納得。「腐食」による銅版画は、その過程を自分の手の中で短時間のうちに画像化する仕事と捉えるようになったこと。3.11の大災害の後、自身の作品の中に穏やかな光が現れるようになったこと、などなど。

巧みな話術で、詩的に、時にユーモラスな話題も交えながら、質問者にわかりやすく話してくださいました。先生の慈しみ溢れる人間性にも触れることができたようで婆はいたく感激して帰ってきました。




展覧会は11月20日(水)まで。入場無料です。


2019年10月21日月曜日

動物表現は無限の可能性を秘めて

動物は自分の版画のモチーフとしてしばしば登場してもらっています。リアルにもイラスト風にも、可愛らしくも不思議にも、動物表現は無限の可能性を秘めているように感じています。この週末訪れた展覧会は偶然ですが、どれも動物が主役の作品でした。

一つは「林陽子 銅版画展 ーMystic elements Vl ~ my lost crown ー」
繊細でクラシックな印象の絵はケルトの森をイメージしているとのことです。細部まで心を込めて描かれた絵にはそこここに動物が隠れていて発見したときは「見つけた!」と叫んでしまいそうです。(銀座伊東屋K-ITOYA B1で10月31まで)



同じ伊東屋で開かれている「ケモノはあるく」展。こちらは森田MIUさんとYOSHINOBUさんのユニットによる展示です。オリジナル作品に加えて、動物モチーフを織り込んだポーチやハンカチーフなどの雑貨も色々。どれをとっても、詩人の仕事だなと感じます。ユーモラスにデフォルメされた動物がシンプルな線で描かれていて色合いもシック。みんな連れて帰りたい!(銀座伊東屋本館1Fで10月29日まで)



もう一つは唐津のり子さんの版画展「椅子の上の猫たち」。唐津さんの作品は、いつ見ても余白の美しさに感心します。今回、柄物の椅子と猫ちゃんの組み合わせがとてもお洒落なのですが、これもスペース配分が大きく寄与しているように思いました。(コピス吉祥寺4F連絡通路で10月31日まで)


2019年10月13日日曜日

備えあれば、とは言うものの....

大型台風19号が通り過ぎていきました。各地で川の決壊や土砂崩れがあり、多くの方々が被災されました。
台東区も、万一近くの荒川が増水して決壊すると、一部の高台以外ほぼ区内全域が浸水すると聞いていました。急ぎ、防災関連の情報資料を出してみました。


①「水害ハザードマップ」。区が配布。自然災害のうち洪水(浸水)について、浸水範囲を予想し地図化したもの。これによると婆宅は、荒川決壊後、3〜6時間以内に3〜5mの浸水があると予想されています!避難場所は上野公園と谷中墓地との2箇所。
②「台東区防災地図」。区が配布。災害が発生したときに避難する場所や、防災関係施設などを記載。こちらは主に震災を想定。近くの学校などに避難所マークがついています。



これらを眺めているうちに疑問がわいてきたので区の災害対策課に電話しました。

震災だと近くの学校などに避難できるが、学校の入り口を誰がいつ開けてくれる?
洪水の際、区内中の人間が上野公園に避難できるのだろうか?立錐の余地ない状態になってしまうのでは?

災害対策課の返事です。
今回は、震災避難のことは切り離して洪水のことだけ考えて欲しい。近所の施設などに避難すると、水が引くまでの一週間位の間そこで孤立してしまう恐れ有り。先ず命だけは守るということで、上野公園に逃げる。が、そこで避難生活を送るということではない。各自が文京区とか近隣地域に移って水が引くのを待つということです。

そうなのですか〜。上野公園が避難場所というのはそういう意味なのですね。その先の行き先を自分で確保しておかなければいけないということ。その備えが必要なのですね。あらら。
急いで区外の友人にメールをし、万が一の際の受け入れをお願いしたのでした。


2019年10月5日土曜日

カダケスをご存知ですか?

10日間ほど旅に出ていました。
40年ぶりのスペインでしたが、古い町バルセロナやマドリードはほとんど何も変わっていない印象。日々激変する東京とは対照的でした。

一つ変わったのはソフトの方。どのサービスもNET優先になっていたことです。ホテルはもちろん、列車も高速バスも。想像できるものは、東京で予約していきましたが、美術館も例外ではありませんでした。
例えば、バルセロナのピカソ美術館。フリーで訪ねてみたら、NET予約で既に定員に達していて入れませんでした。ホテルで予約してから再訪。危ういところでした。

今回のお目当は、スペインの北の端、地中海沿岸の小さな町・カダケスを訪れることと、マドリードのSorolla の美術館で彼の作品をじっくり観ること。この二つでしたが、どちらにも満足しました。

カダケス(Cadaques)は美しい町でした。足の便の悪さから観光客が少なく、昔ながらの白壁にオレンジ瓦の家並みが手付かずのまま残っています。ダリやピカソら多くの芸術家が愛したということで、石畳の細い通りには小さいギャラリーが点々とありました。




その一つのギャラリーで開かれていたミニ版画の展覧会に婆も出品していたのでちょっと覗いてみたかったのです。たまたまお会いした主催者の方から、その場で、売却済み作品の代金を支払われ、追加作品を送るように言われたのにはビックリ。おおらかな運営をしているようでした。

Sorolla は、 Sorolla美術館(彼の自宅だった)にあるもの、王立美術アカデミーやプラド美術館が所蔵展示している作品、どれをとっても彼の技術の高さが遺憾なく発揮されていて、う〜んと唸るばかりでした。




夏の名残の日差しが眩しく肌を焦がして帰ってきましたが、思い切って出かけて良かったなと思っています。